紀州東照宮に行くの巻

今日は朝からあいにくの雨でした。
それでも、なんとなく歩きたくなって紀州東照宮へ行ってきました。

少しひんやりした空気のなか参道を進むと、やがて108段の侍坂(さむらいざか)が現れます。和歌祭のときに神輿下ろしが行われる、あの有名な石段です。
息を整えて登りきると、朱塗りの楼門が鮮やかに聳え立ち、振り返れば和歌浦の海が広がっていました。まさに絶景です。

社殿は元和七年(1621)、紀伊徳川家の初代・徳川頼宣が創建したもの。権現造りの荘厳な建物には、講談でもお馴染みの左甚五郎の彫刻と、絵師・狩野探幽の襖絵が飾られています。(撮影禁止なので写真はありませんが……)
甚五郎と探幽が一つの空間に並ぶ、なんとも贅沢な場所です。雨音を聞きながら、名人たちの息遣いに耳をすませました。

この二人が登場する講談に「掛川の宿」というお話があります。
「名工伝」と呼ばれるジャンルで、稀代の名人二人が繰り広げる愉快なストーリーです。

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【掛川の宿】
遠州・掛川宿の本陣「遠州屋」に、素性を隠した甚五郎と探幽が偶然泊まり合わせます。
互いにただ者ではないと感じつつ、夜中にそれぞれいたずら心を起こす。探幽は金屏風に浴衣で山水を描き、甚五郎は床柱に大黒天を彫る――翌朝、宿の主人は真っ青。
ところが、現れた尾張の殿様は「見事じゃ」と感嘆し、それが狩野探幽と左甚五郎の合作と知って、二人の名はいっそう高まります。

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紀州東照宮の楼門の下で雨に濡れながら、
「いつかこの『掛川の宿』をやってみたいな」と思いました。

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